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女性の社会進出は、日本経済にとっても重要な課題です。しかし、日本はまだ男女間の賃金格差や管理職比率などで世界的に見ても低い水準にとどまっています。このままでは、日本は国際競争力や経済成長率を低下させることになりかねません。
そこで、この記事では、女性の社会進出が日本経済にもたらす3つのメリットを紹介します。それぞれのメリットについては、2023年にノーベル経済学賞を受賞した米ハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授の研究を参考にしながら説明していきます。
1.女性の社会進出は労働力不足を解消する
女性の社会進出は、潜在的な労働力として大きな可能性を秘めています。
ゴールディン教授は、アメリカの200年以上にわたるデータを分析しました。そして、女性の労働市場への参加率がどのように変化したかを明らかにしました。その結果、女性の教育水準や職業選択だけではなく、家庭や子育てと仕事との両立が可能かどうかが重要な要因であることを示しました。つまり、女性が仕事と家庭とのバランスを取りやすい環境が整えば、より多くの女性が働き続けることができるということです。
1-1 日本での場合
日本は少子高齢化や人口減少により、労働力不足に悩まされています。厚生労働省によると、2020年時点で労働力人口は約7600万人でした。しかし、2030年には約7000万人まで減少すると予測されています。これは経済活動や社会保障制度に大きな影響を与える問題です。
日本でもアメリカでも同様に、女性が働きたいと思っても仕事を辞めざるを得ないケースが多くあります。特に子育て期間中は、「M字カーブ」と呼ばれる就業率の低下が顕著です。これは、育児休業制度や保育施設などの社会的支援が不十分だったり、職場の風土や制度が柔軟でなかったりすることが原因です。しかし、これらの問題を解決し、女性が働きやすい環境を作れば、労働力不足を解消することにつながります。
実際、ゴールディン教授の試算によると、男女の雇用格差を解消できれば、日本の就業者数は820万人増加し、GDPの水準は15%押し上げられる効果があるとされています。
2.女性の社会進出は企業の競争力を高める
女性の社会進出は、労働力不足だけでなく、企業の競争力を高めることにも寄与します。なぜなら、女性は男性とは異なる視点や能力を持ちます。それは、組織の多様性や創造性を高めるからです。
ゴールディン教授は、男女の賃金格差が生じる原因についても研究しました。その結果、賃金格差は教育や職業選択だけではなく、仕事の柔軟性や時間的制約によっても影響されることを示しました。つまり、仕事において時間的な柔軟性が必要な場合や、時間外労働が多い場合は、男性が有利になりやすいということです。しかし、これは逆に言えば、女性が有利になりやすい仕事もあるということです。例えば、コミュニケーション能力や協調性が求められる仕事や、創造的なアイデアが必要な仕事などです。
日本でも同様に、女性が活躍できる分野や職種は多くあります。特にサービス業や知識産業などは、女性の強みを生かすことができます。また、女性は消費者の約70%を占めております。そのため、女性のニーズや嗜好を理解することも重要です。そのため、女性を採用したり昇進させたりすることは、企業の競争力を高めることにつながります。実際、女性管理職比率が高い企業ほど業績が良いという研究もあります。
3.女性の社会進出は社会全体の幸福度を向上させる
女性の社会進出は、日本経済だけでなく、社会全体の幸福度を向上させることにも寄与します。なぜなら、女性が自分の能力や希望に応じて働くことで、自己実現や自信を得られます。また、家庭や地域での役割分担や協力関係が改善されたりするからです。
ゴールディン教授は、「ウーマノミクス」という言葉を提唱しました。これは、「女性(woman)」と「経済(economics)」を組み合わせた造語です。「女性が経済活動に参加することで経済に貢献するだけでなく、女性自身や家族、社会の幸福度を高めることを意味するものです。
ゴールディン教授は、女性が自分の能力や希望に応じて働くことで、自己実現や自信を得られるとともに、家庭や地域での役割分担や協力関係が改善されることを示しました。
例えば、女性が経済的に自立できれば、パートナーや子どもとの関係性やコミュニケーションが良くなります。また、離婚や虐待などのリスクが低下したりすることがあります。女性が社会的に活躍できれば、政治や教育などの分野で女性の声や意見が反映されたり、男女平等や人権などの社会的課題に対する意識が高まったりすることがあります。
まとめ
女性の社会進出が日本経済にもたらす3つのメリットを紹介しました。それぞれのメリットは、ノーベル経済学賞を受賞したゴールディン教授の研究を参考にしながら説明しました。女性の社会進出は、労働力不足を解消し、企業の競争力を高め、社会全体の幸福度を向上させることにつながります。しかし、これらのメリットを実現するためには、女性が働きやすい環境を作ることが必要です。そのためには、政府や企業だけでなく、個人や家庭も協力していくことが大切です。