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米国債は、世界最大の経済大国であるアメリカ合衆国政府が発行する債券です。米国債は、安全性が高く流動性が豊富な投資商品です。そのため、世界中の投資家から人気があります。しかし、最近では米国の財政赤字の拡大や債務上限問題などにより、米国債の信用力に疑問符がつくようになりました。特に、格付け会社フィッチ・レーティングスが2023年8月1日に、米国のソブリン格付けを最上位の「AAA」から1段階引き下げたことは、衝撃的なニュースでした。
しかし、そんな中でも、米国債を買い続けている著名な投資家がいます。それは、バークシャー・ハサウェイの会長兼CEOであり、「オラクル・オブ・オマハ」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。バフェット氏は、フィッチの格下げ後も変わらずに、毎週100億ドル(約1兆4300億円)分の米国債を購入していると明かしました。バフェット氏は、「心配しなくていいこともある。これ(格下げ)はその一つだ」と語りました。
では、なぜバフェット氏は米国債を買い続けるのでしょうか?その理由を探るために、以下の4つの観点から考えてみましょう。
目次
1. 米国債は安全資産としての地位を失っていない
米国債は、世界中で取引される通貨であるドル建てで発行されています。ドルは、世界の貿易や金融において重要な役割を果たしております。そのため、多くの国や企業がドルを保有しています。そのため、ドル需要は高く安定しており、ドル建て資産である米国債も同様に需要があります。また、米国は政治的に安定しており、法的な枠組みも整っています。そのため、米国がデフォルト(債務不履行)する可能性は極めて低く、米国債は安全資産としての地位を失っていません。
2. 米国債は利回りが低くても魅力的な投資商品である
米国債は安全資産としての需要が高いです。そのため、利回り(金利)は低くなります。実際に、2023年8月4日時点での10年物米国債利回りは約4.08%です。これは歴史的に見ても低い水準です。しかし、利回りが低くても米国債は魅力的な投資商品であると言えます。なぜなら、利回りが低いことは価格が高いことを意味しています。価格が高いことは売却益が得られる可能性が高いことを意味するからです。つまり、米国債は、安全性と流動性を確保しながら、資本利得(売却益)を狙うことができる投資商品なのです。
3. 米国債はインフレリスクに対するヘッジとして機能する
米国債はインフレリスクに対するヘッジとして機能します。米国では、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するために、大規模な財政出動や金融緩和が行われました。その結果、米国のマネーサプライ(通貨量)は急増しました。マネーサプライが増えると、物価が上昇するインフレが発生する可能性が高まります。
インフレが発生すると、現金や預金などの固定金利の資産は実質的な価値を失います。しかし、米国債はインフレリスクに対するヘッジとして機能します。なぜなら、インフレが発生すると、長期金利(長期債の利回り)は上昇し、長期債の価格は下落します。そのため、長期債を売却して短期債に切り替えることで、高い利回りを得ることができるからです。つまり、米国債は、インフレによる資産価値の減少を防ぐことができる投資商品なのです。
4. 米国債はバフェット氏の投資哲学に合致している
米国債はバフェット氏の投資哲学に合致しています。バフェット氏は、自分が理解できるビジネスに投資することを重視しています。また、長期的な視点で投資し、短期的な市場の動向に惑わされないことを重視しています。そのため、米国債は、バフェット氏の投資哲学に合致していると言えます。なぜなら、米国債は単純で分かりやすい商品であり、長期的に安定した収益を提供する商品だからです。バフェット氏は、「私は米国債を買っている。私はそれが正しいことだと思っている」と述べています。
まとめ
米国債をバフェット氏が買い続ける理由は、米国債が安全資産としての地位を失っていないこと、利回りが低くても魅力的な投資商品であること、インフレリスクに対するヘッジとして機能すること、バフェット氏の投資哲学に合致していることの4つに分けられます。バフェット氏は、「私は米国債を信頼している」と語っています。格付け会社や市場の動向に左右されずに、自分の判断で投資するバフェット氏の姿勢からは、多くのことを学ぶことができるでしょう。