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TSMCという会社をご存知でしょうか?現在、半導体不足が深刻化してます。その中で、世界最大の半導体受託生産メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に新工場を建設することが決まりました。
このニュースは熊本県だけでなく、日本全国の半導体産業にとっても大きなインパクトを与えるでしょう。では、なぜTSMCは熊本を選んだのでしょうか?また、TSMCの進出によって熊本で起きていることや今後の展望はどうなるのでしょうか?今回は、これらの疑問に答えるべく、TSMC熊本工場の概要や背景、影響などについて解説します。
目次
1. TSMC 熊本工場の概要
TSMCは2021年4月に、熊本県菊陽町に新工場を建設することを発表しました。この工場はTSMCの日本法人であるJASM(ジャパン・アドバンスト・セミコンダクタ・マニュファクチャリング)が運営し、Fab23と呼ばれます。敷地面積は約23ヘクタールで、東京ドーム4.5個分に相当します。建物はFAB棟やオフィス棟など4棟からなり、ガスヤードや駐車場なども設置されます。
2022年春に着工し、2023年後半に完成させる予定です。2024年12月から出荷を開始する計画で、月に5万5000枚(300ミリウエハー換算)の半導体を生産する予定です。回路線幅は10~20ナノメートル台。主に自動車や産業用途向けの製品を製造します。投資額は約1.1兆円で、約1700人が従事する見込みです。
2. TSMC が熊本を選んだ理由
TSMCが熊本を選んだ理由には、いくつかの要因が考えられます。
2-1 TSMC が熊本を選んだ理由 -日本市場への対応 –
まず一つ目は、日本市場への対応です。日本は半導体の需要が高く、特に自動車や産業用途向けの製品に強みを持っています。しかし、日本国内では半導体の供給能力が不足しています。そのため、海外からの輸入に頼っています。
以上のことから、TSMCは日本市場に近い場所で生産することで、顧客のニーズに応えやすくなると考えたのでしょう。また、日本の半導体メーカーとの協業も視野に入れているとみられます。例えば、TSMCはソニーと合弁会社を設立しました。熊本県内にあるソニー子会社の工場隣接地に新工場を建設することも発表しています。この新工場では、ソニーのイメージセンサーなどを生産する予定です。
2-2 TSMC が熊本を選んだ理由 -熊本県の協力姿勢 –
二つ目の理由は、熊本県の協力姿勢です。熊本県はTSMCの進出を歓迎し、積極的に誘致活動を行いました。例えば、熊本県はTSMCに対して、工場用地の提供や税制優遇などのインセンティブを用意しました。また、TSMCが必要とする電力や水道などのインフラ整備や人材育成などの支援も約束しました。さらに、熊本県はTSMCの台湾本社を訪問。経営陣と直接交渉するなど、信頼関係を築く努力もしました。
2-3 TSMC が熊本を選んだ理由 -熊本県の立地条件 –
三つ目の理由は、熊本県の立地条件です。熊本県は九州地方の中央に位置し、九州各地や本州とのアクセスが良好です。特に、阿蘇くまもと空港から台湾まで直行便が運航されております。そのため、TSMC本社との往来が便利です。また、熊本県は自然災害や政治的リスクが比較的少ない地域です。そのため、安定した生産活動が可能です。さらに、熊本県は半導体産業の歴史があり、関連企業や人材が集積しています。例えば、ソニーやロームなどの半導体メーカーや東京エレクトロンやラピダスなどの半導体製造装置メーカーが熊本県内に拠点を持っています。
3. TSMC 進出による熊本県への影響
TSMC進出によって、熊本県には様々な影響が及ぶと予想されます。
3-1 TSMC 進出による熊本県への影響-経済面-
まず経済面では、TSMC進出による経済効果は約4.29兆円と試算されています。これは熊本県の2019年度の名目GDP(約4.5兆円)に匹敵する規模です。また、TSMC進出に伴って関連企業やサプライヤーも集積することが見込まれてます。そのため、半導体産業全体の活性化や雇用創出につながるでしょう。
3-1 TSMC 進出による熊本県への影響-社会面-
次に社会面。TSMC進出によって多数の台湾人が熊本県に移住することが予想されます。これは熊本県にとって人口減少や高齢化への対策となる可能性があります。しかし、同時に、言語や文化の違いなどによるコミュニケーションの課題や、地域社会への受け入れ体制の整備なども必要になるでしょう。
熊本県はTSMC従業員やその家族のために、日本語教育や生活相談などのサポートを行う予定です。また、地元住民や熊本在住の台湾人らによる草の根的な支援活動も展開されています。例えば、台湾人が運営する飲食店や物産店が増えたり、台湾文化を紹介するイベントが開催されたりしています。こうした取り組みは、TSMC従業員やその家族が熊本で快適に暮らすためにも重要です。ですが、同時に、熊本県民と台湾人との交流や相互理解を深める機会にもなるでしょう。
4. TSMC 進出による今後の展望
TSMC進出は、日本全国の半導体産業にとっても大きな意義を持ちます。まず、TSMCは半導体の最先端技術を持つメーカーです。そのため、その技術力やノウハウを日本に持ち込む。日本の半導体産業の競争力やイノベーション力を高めることができるでしょう。
また、TSMCは世界中の半導体メーカーや顧客と幅広いネットワークを持っております。そのネットワークを通じて日本の半導体産業が国際的な連携や協業を促進することができるでしょう。さらに、TSMCは半導体不足の解消に向けて積極的に生産能力を拡大しております。その一環として日本に新工場を建設する。それによって、日本国内の半導体供給量を増やすことができるでしょう。これは、自動車や産業用途などの半導体需要が高まっている日本市場にとっても有利です。
4-1 TSMCの熊本進出による日本メーカーへの悪影響
一方で、TSMC進出は日本の半導体産業にとっても課題やチャレンジをもたらします。
まず、TSMCは半導体受託生産メーカーであり、自社で製品を開発しません。そのため、日本の半導体メーカーとは競合しないという見方もあります。しかし、実際にはTSMCは自社で半導体の設計や開発を行うサービスも提供しており、日本の半導体メーカーとは競合する可能性もあります。
また、TSMCは高い技術力や生産能力を持っております。そのため、日本の半導体メーカーとは品質やコストなどの面で差別化することが難しくなるかもしれません。
さらに、TSMCは熊本県内で多数の人材を採用する予定です。そのため、日本の半導体メーカーとは人材の確保や育成などの面で競争するかもしれません。これらの課題やチャレンジに対応するためには、日本の半導体産業はTSMCと協力するだけでなく、自らも技術革新や生産効率化などに取り組む必要があるでしょう。
まとめ
TSMCは世界最大の半導体受託生産メーカーです。そんな会社が、熊本県に新工場を建設することを発表しました。
この工場は2024年12月から出荷を開始する予定です。自動車や産業用途向けの半導体を製造します。
TSMCが熊本を選んだ理由には、日本市場への対応、熊本県の協力姿勢、熊本県の立地条件などがあります。TSMC進出によって、熊本県には経済効果や人口増加などのメリットがあります。しかし、言語や文化の違いなどの課題もあります。また、日本全国の半導体産業にとっても、TSMC進出は競争力やイノベーション力の向上や半導体供給量の増加などのメリットがあります。技術革新や生産効率化などのチャレンジもあります。TSMC進出は熊本県や日本全国の半導体産業にとって大きな意味を持つ出来事です。