この記事はおよそ 5分9秒で読めます。
合成燃料をご存知ですか?
今回は、カーボンニュートラルを目指す世界で注目されている新しい燃料「合成燃料」についてお話ししたいと思います。合成燃料とは、水と酸素から作る人工的な原油です。化石燃料と同じように内燃機関や既存のインフラを使って利用できます。しかし、その製造過程ではCO2を再利用するため、脱炭素燃料として期待されています。
この合成燃料は、どのように作られるのか?どんなメリットや課題があるのか?そして、投資家としてどう見るべきなのか?これらの点について解説していきます。
1. 合成燃料の製造方法と特徴
合成燃料は、CO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して作られます。CO2は、発電所や工場などから排出されたものや、大気中から直接分離・回収したものを利用します。H2は、再生可能エネルギー(再エネ)などで作った電力を使って、水から水電解することで調達します。このようにして作られた合成燃料は、複数の炭化水素化合物の集合体であり、“人工的な原油”とも言われています。この合成燃料は、以下のような特徴を持ちます。
- エネルギー密度が高い:
少ない量でも多くのエネルギーに変換できるため、大型車や航空機などに適しています。 - 内燃機関やインフラが活用できる:
化石燃料と同じようにガソリンや軽油などに加工できます。そのため、既存のエンジンやタンクなどをそのまま使えます。 - 脱炭素燃料である:
製造過程ではCO2を再利用するため、CO2排出量を抑えられます。また、硫黄分や重金属分が少ないため、燃焼時にもクリーンです。
2. 合成燃料の市場動向と展望
合成燃料は、カーボンニュートラルを目指す世界で重要な役割を果たす可能性があります。特に、電動化や水素化が困難な分野では、代替燃料として注目されています。以下では、主要な分野ごとに合成燃料の市場動向と展望を見ていきましょう。
2-1. 自動車
自動車分野では、電動車の普及が進んでいますが、まだまだエンジン車も多く存在します。国際エネルギー機関(IEA)の見通しによると、2040年時点でも乗用車販売の84%がエンジン搭載車になると予想されています。
このようなエンジン車に供給する脱炭素燃料として、期待されています。特に、商用車などの大型車では、電動化や水素化にはエネルギー密度の問題がありますが、合成燃料ならその問題を解決できます。また、既存のインフラやエンジンを活用できるため、導入コストも低く抑えられます。ただし、合成燃料の製造コストは現状では高く、化石燃料との価格競争力に劣ります。
そのため、製造効率の向上やCO2やH2のコスト低減などの技術開発が必要です。また、国際規格の策定や政策的な支援も重要です。
2-2. 航空機
航空機分野では、国際民間航空機関(ICAO)が2021年以降の国際航空に関してCO2排出量を増加させないという目標を採択しています。そのため、航空燃料の代替としてバイオジェット燃料や合成燃料が注目されています。バイオジェット燃料はすでに商用化されていますが、原料の確保やコスト面で課題があります。一方、合成燃料はCO2とH2から工業的に大量生産できるため、持続可能な航空燃料となる可能性があります。しかし、合成燃料も製造コストが高く、化石燃料との価格競争力に劣ります。そのため、製造効率の向上やCO2やH2のコスト低減などの技術開発が必要です。また、国際規格の策定や政策的な支援も重要です。
2-3. 石油精製業
石油精製業では、国内の石油需要の減少で設備能力の削減が求められる一方、余剰となったタンクや土地などの資源をどう活用するかという課題があります。そのため、既存インフラを活用できる合成燃料の導入はメリットがあります。
また、合成燃料は化石燃料と同じようにガソリンや軽油などに加工できるため、既存の製品ラインナップを変えることなく販売できます。さらに、合成燃料は脱炭素燃料であるため、CO2排出量を削減することでESG投資への対応もできます。ただし、合成燃料は現在では高コストであり、化石燃料との価格競争力に劣ります。
そのため、製造効率の向上やCO2やH2のコスト低減などの技術開発が必要です。また、国際規格の策定や政策的な支援も重要です。
まとめ
合成燃料はカーボンニュートラルを目指す世界で重要な役割を果たす可能性があります。しかし、現状では高コストであり、価格競争力に劣ります。そのため、製造効率の向上やCO2やH2のコスト低減などの技術開発が必要です。また、国際規格の策定や政策的な支援も重要です。