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新型コロナウイルスの影響で一時的に下落した地価が、経済再開とともに回復の勢いを見せています。国税庁が発表した2023年1月1日時点の路線価は、全国平均で1.5%上昇し、コロナ前の上昇率に戻りました。
しかし、地価回復は地域や用途によって大きな差があります。特に商業地やオフィス街は、在宅勤務やインバウンド需要の減少などで下落が続いています。一方、住宅地や再開発エリアは、住宅ニーズやインフラ整備などで上昇を続けています。
この記事では、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)の地価動向を中心に紹介し、今後の展望を考えてみたいと思います。
1. 東京圏:郊外人気と再開発が地価を押し上げる
東京圏では、神奈川県や千葉県など郊外エリアが地価上昇率のトップを占めています。これは、コロナ禍で郊外への移住や二拠点居住が増えたことや、駅周辺での再開発が進んだことが要因です。
例えば、横浜駅西口エリアでは、タワーマンションや複合施設などの大規模開発が相次ぎ、「鶴屋橋北側」の路線価は6.2%上昇しました。また、千葉駅前では、「千葉駅前大通り」が5.1%上昇しました。
一方、東京都心では、テレワーク普及によりオフィス需要が減少したことや、インバウンド需要が消失したことで商業地が下落しています。特に銀座中央通り「鳩居堂前」は1.1%下落し、2年連続でマイナスとなりました。
しかし、東京都内でも再開発エリアや住宅ニーズの高いエリアは上昇しています。例えば、「北千住駅西口駅前広場通り」は5%、「中野駅北口駅前広場前」は4.9%上昇しました。
2. 名古屋圏:栄エリアを中心に回復
名古屋圏では、0.2%の上昇でした。昨年は愛知県をはじめ大きく下落しましたが、大規模開発が進む名古屋市を中心に回復傾向にあります。
特に上昇率が高かったのが、栄地区に隣接する東区久屋街「久屋大通り」で8.7%です。ここでは、公園と店舗が一体となった「Hisaya-odori Park(ヒサヤオオドオリパーク)」が2020年に開業し、街の活性化につながりました。また、栄には「マルエイ ガレリア」や「コンラッド」などの商業施設やホテルの開業が控えています。
一方、インバウンド需要の影響を受けた繁華街は下落しています。例えば、「錦通り」は1.6%下落しました。
3. 大阪圏:2025年万博へ向けて回復
大阪圏も路線価はプラスに転じ、回復傾向にあります。2025年には国際博覧会(大阪・関西万博)が控えています。オフィスビルや住宅のニーズは高まっているようです。
万博会場の人工島・夢洲(ゆめしま)への中継ポイントとなる大阪市港区弁天1丁目「中央大通」は3.4%の上昇でした。ここでは、マンションや商業施設の開発競争が起きています。
しかし、インバウンド需要が消失した大阪の商業地は下落が続いています。最も下落が大きかったのが、大阪ミナミの「心斎橋筋」で10.6%下落です。全国でも2年連続で最大の下落でした。
一方、郊外エリアでは上昇率が高かったです。「JR芦屋駅前」は5.7%、「南海堺東駅前」は3.3%上昇しました。これらのエリアでは、住宅ニーズやインフラ整備などで地価を押し上げています。
まとめ
以上のように、地価回復は地域や用途によって差があります。特に商業地やオフィス街はコロナ禍の影響を受けており、先行きは不透明です。一方、住宅地や再開発エリアは住宅ニーズやインフラ整備などで上昇を続けています。
今後もコロナ禍からの経済再開やワクチン接種の進捗などによって地価動向は変化する可能性があります。不動産投資や土地活用を考える方は、最新の情報をチェックしておくことが重要です。