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ダークパターンをご存知でしょうか?
インターネットで買い物をしたり、サービスに登録したりするとき、あなたは本当に自分の意思で決めていますか?実は、消費者が気づかない間に不利な判断や意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのウェブデザインが存在します。これをダークパターンと呼びます。
ダークパターンは、消費者の心理や行動経済学を利用して、ウェブサイトやアプリのユーザーインターフェースやコンテンツを操作します。 その結果、消費者は、本来望まない商品やサービスを購入したり、個人情報や権利を放棄したりすることになります。
この記事では、ダークパターンの定義や種類、日本や海外での対策、そして消費者が気を付けるべきポイントについて解説します。
目次
1.ダークパターンとは?
ダークパターンという用語は、2010年にユーザーエクスペリエンスデザイナーのハリー・ブリグナルが提唱しました。
彼は、ダークパターンを「ユーザーが本来望まないことをさせるために設計されたユーザーインターフェース。」と定義しました。
ダークパターンにはさまざまな種類があります。代表的なものとして以下のようなものが挙げられます。
- バイトアンドスイッチ:
ユーザーが求める機能やサービスとは異なるものに誘導する。 - スニーキング:
ユーザーが注文や登録を完了する前に、気づかないうちに追加料金やオプションを選択させる。 - ミスディレクション:
ユーザーの注意をそらして、望ましくない選択肢を選ばせる。 - ソーシャルプルーフ:
他のユーザーや専門家の意見や評価を利用して、ユーザーに影響を与える。 - スカーシティ:在庫や期限が少ないという印象を与えて、ユーザーに急かす。
- オバストラクション:
ユーザーがサービスから退会したり、契約を解除したりすることを困難にする。
これらのダークパターンは、消費者に不利益や不快感を与えるだけではありません。
ウェブサイトやアプリの信頼性や評判も低下させる可能性があります。
2.ダークパターンについて日本ではどのような対策をしているか?
ダークパターンに関する法的な規制やガイドラインについて日本ではまだ整備されていません。しかし、消費者庁や総務省などの行政機関は、消費者の利益を守るために、ウェブサイトやアプリの運営者に対して、以下のような指針や注意喚起を行っています。
- 消費者契約法:
消費者が不当な影響を受けて契約をした場合、その契約を取り消すことができると定めています。 この法律は、ダークパターンによって不利な契約をした消費者の救済にも適用される可能性があります。 - 個人情報保護法:
個人情報の取得や利用について、事業者に適切な管理や開示を義務付けています。 この法律は、ダークパターンによって個人情報を不正に取得されたり、不本意に利用されたりすることを防ぐためにも重要です。 - 電子商取引ガイドライン:
消費者庁が作成したウェブサイトやアプリの運営者向けのガイドラインです。 このガイドラインでは、商品やサービスの内容や価格、契約条件などを明確に表示することや、キャンセルや返品などの方法を容易にすることなどが求められています。
これらの対策は、ダークパターンを防止するための一助となります。しかし、消費者自身も注意深くウェブサイトやアプリを利用する必要があります。
3. ダークパターンに対して海外での対策は?
海外では、ダークパターンに対する認識や対策が日本よりも進んでいます。特に欧米では、ダークパターンが消費者の権利やプライバシーを侵害するとして、法的な規制や社会的な監視が強化されています。
3-1 ダークパターンへの対応
例えば、欧州連合(EU)では、2018年に一般データ保護規則(GDPR)が施行されました。 この規則は、個人情報の保護や利用に関する厳格な基準を設けてます。これは、ダークパターンによって個人情報を不正に取得したり、同意を強要したりすることを禁止しています。
また、アメリカでは、2019年にカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が施行されました。 この法律は、カリフォルニア州の消費者に個人情報の取得や利用に関する権利を認めております。これによって、ダークパターンによって権利を放棄させることを禁じています。
3-2 ダークパターンの研究や啓発活動
さらに、世界各国では、ダークパターンの研究や啓発活動も盛んに行われています。
例えば、ノルウェーの消費者団体は、ダークパターン・ホール・オブ・シェイムというウェブサイトを運営しております。これは、ダークパターンの事例やその影響を紹介しています。
また、イギリスの研究者たちは、ダークパターン・ディテクターというツールを開発しております。これによって、ウェブサイトやアプリにダークパターンが含まれているかどうかを自動的に判定することができます。
これらの対策は、ダークパターンの問題に対する意識を高めるとともに、消費者の権利やプライバシーを守るための有効な手段となります。
4.ダークパターンの気を付けるポイントは?
ダークパターンに騙されないためには、消費者自身が注意深くウェブサイトやアプリを利用することが重要です。以下に、ダークパターンの気を付けるべきポイントをいくつか紹介します。
4-1 慎重に読む
ウェブサイトやアプリの画面や文章には、消費者の判断や感情を操作するような言葉や色や形が使われていることがあります。そのため、商品やサービスの内容や価格、契約条件などを慎重に読みましょう。自分が本当に望むものかどうか確認することが大切です。
4-2 比較する
ウェブサイトやアプリでは、他のユーザーや専門家の意見や評価を利用して、消費者に影響を与えることがあります。しかし、これらの情報は必ずしも正確で客観的であるとは限りません。そのため、他の情報源やサービスと比較することで、より適切な判断をすることができます。
4-3 時間をかける
ウェブサイトやアプリでは、在庫や期限が少ないという印象を与えて、消費者に急かすことがあります。しかし、これらの情報は必ずしも真実であるとは限りません。そのため、焦らずに時間をかけて考えることで、後悔しない選択をすることができます。
4-4 変更する
ウェブサイトやアプリでは、気づかないうちに追加料金やオプションを選択させることがあります。しかし、これらの選択は必ずしも最終的なものではありません。そのため、注文や登録の前に確認画面を見て、必要ないものは変更することができます。
4-5 拒否する
ウェブサイトやアプリでは、個人情報や権利を放棄させることがあります。しかし、これらの要求は必ずしも受け入れる必要はありません。そのため、個人情報の取得や利用に関する同意や、サービスからの退会や契約の解除などに関する権利を知っておき、必要に応じて拒否することができます。
これらのポイントを覚えておくことで、ダークパターンに騙されずに、自分の意思でウェブサイトやアプリを利用することができます。
まとめ
ダークパターンは、消費者を不利にする悪質なウェブデザインの一種です。ダークパターンは、消費者の心理や行動経済学を利用して、ウェブサイトやアプリのユーザーインターフェースやコンテンツを操作します。 その結果、消費者は、本来望まない商品やサービスを購入したり、個人情報や権利を放棄したりすることになります。
この記事では、ダークパターンの定義や種類、日本や海外での対策、そして消費者が気を付けるべきポイントについて解説しました。ダークパターンは、消費者に不利益や不快感を与えるだけでなく、ウェブサイトやアプリの信頼性や評判も低下させる可能性があります。そのため、消費者自身が注意深くウェブサイトやアプリを利用することが重要です。