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2022年は、日本の3Dプリンター住宅元年と言われた年でした。
アメリカではいちはやく3Dプリンター住宅が市場に出始めていますが、日本でも数社がこの技術の導入に名乗りをあげています。
すでに群馬県では試験的に3Dプリンター住宅が建ち、話題となっています。
もともと頑丈さが売りの技術ですが、地震や雹などの自然災害や、実際の居住生活における安全性が確認されれば、今年から本格的に安価で販売されていく予定も立てられています。
今回はそんな3Dプリンター技術による住宅について概要と、不動産投資の未来について考えてみました。
目次
3Dプリンター住宅の特徴
3Dプリンター住宅には、いままでの住宅とは違う特徴がいくつか挙げられます。いずれも丈夫な住宅を安価に手に入れることができる。ということにつながるものです。
まずは工期の短さです。3Dプリンターでの工事自体は非常に早く、30㎡ほどの家が1日で建ってしまいます。
設計と材料、建てる土地が揃えば、今日建て始めて明日には出来上がってしまうというスピードです。
漫画ドラゴンボールの初期によく出てきたホイポイカプセルは、カプセルの上のボタンを押して地面に投げると、あっという間に家ができてしまうという発明品でした。
ここまで一瞬ではありませんが、かなり近いレベルで、あっという間に家がたってしまうというイメージです。
これなら工期の間の天候や天変地異は考える必要がありません。よくある工期の遅れ問題も解消されるでしょう。
なにしろ3Dプリンターですので、作った図面に合わせて機械がコンクリートを流し込んでいくだけです。
あとはドアや窓をはめ込み、隙間をシーリングして完成というところでしょうか。
細かい技術面はまだ検討の余地ありというところかもしれませんが、これだと職人の数もかなり少なくて済みます。建売りであれば設計もほとんど手間がかかりません。
これによってかなり安価に住宅を完成することができます。現在日本に3Dプリンター技術を持ち込んでいるセレンディクス社によれば、一人用の住宅を300万円、家族用の住宅でも500万円で提供するのが目標とのことです。
新築が500万円で手に入る、となれば、かなり革命的な値段です。近年の住宅は建築するのに100㎡程度で1500〜2000万円くらいかかるのが相場です。
中古物件並みの価格で新築が手に入るのですから、本格化すれば市場インパクトはなかなか大きいのではないでしょうか。
また頑丈さもこの技術の売りです。コンクリートをドーム型に積み上げる構造でつくるスタイルですので、風雨はもちろん、雪、熱、日光などにも高い耐久性があります。地震にも理論的には耐えうる頑丈さがあります。
日本は地震が多いため、度重なる地震に耐えられるかは課題かと思いますが、安全性のデータは慎重に積み上げられているところです。
アメリカでは、この早さ、頑丈さ、安価という点に着目して、月面での利用がすでに検討されています。
よく宇宙映画などで出てくる、未来型のドーム状の家が、現実に建てられる可能性が出てきたということです。
かなり大まかな説明ですが、これが3Dプリンターの特徴となります。ここからは、この技術がもたらす変化について考えてみたいと思います。
1.3Dプリンター住宅で変わる住宅
もし、3Dプリンター住宅が普及した場合、不動産投資はどう変わって行くのでしょうか?
まだほとんど何も始まっていないので、なんとも言えません。しかし少なくとも住宅の価格はかなり安価となるわけですから、そのインパクトはかなり大きいものになるでしょう
まず、クルマを購入するくらいの金額で家が買えるようになりますので、かなりの人が自宅を持つ可能性があります。
また、住宅ローンの金額インパクトはかなり抑えられるでしょう。住宅ローンそのものを組まない人も増えるでしょうし、組んだとしても、クルマを買うくらいのローンとなります。
また、建築のスピードが早く、頑丈な家を建てられるため、土地さえあれば、自分の家を何軒も持つような時代になるかもしれません。
土地を持っている人はもちろん、安い田舎での土地で暮らせればよい、という人にとっては、5〜600万円ほどあれば、すぐに一軒を建てることができるのです。
購入する側にとってはかなりメリットが大きいと言えるかもしれません。
水道や電気、ガスのようなインフラをどう整えるか?という問題がクリアできれば、景色のいい山の麓や湖のほとりに、3Dプリンター製の家が立ち並ぶようになるかもしれません。
自動運転と3Dプリンターの家が組み合わされば、通勤ももはやそれほどの苦にもならないかもしれません。
家族とは環境の良い田舎に3Dプリンターの家に住み、山登りやサーフィンを楽しむ一方で、自動運転のクルマで通勤し、ネットでリモートも絡めながら、時には都内の小さなマンションに出張する。
だれもがそんな生活が当たり前になるような、そんな未来も来るかもしれません。
2.3Dプリンターの進出で不動産投資も変化する
どこまで社会情勢が変わるかわかりませんが、少なくとも上記のような社会に近い状態になっていく可能性は少なくありません。
となると、とくに戸建においては上物(うわもの)の価値はほとんどなくなるかもしれません。
また、土地の価値も大きく変わって行く可能性があります。
今までの社会では、長い間不動産に通勤や通学に対しての利便性が求められていました。立地がよい、というのは都会に限りなく近く、便利な都会にアクセスしやすい、ということが優先されてきました。
ところが、もし3Dプリンター住宅が普及した場合は、立地の価値も変わる可能性があります。
少なくとも、通勤や通学に便利、便利な都心に近い、といったアクセス一点の価値観は変わる可能性があります。
風光明媚な場所、落ち着いて過ごせる静かな場所、毎日をリラックスして過ごせる景色の良い場所、自分が心地よく過ごせる落ち着いた土地、都心のあくせくした雰囲気を避けた地域、自分と合う人柄に出会える地域
こんな場所の価値がグッと上がる可能性もあるということです。
3.未来を踏まえた不動産投資方法についての考察
これまで、住宅は材料費と手間の問題から大変な費用と時間がかかるもの、というイメージでした。
今後、建築技術としての安全性が検証されるとしても、もし3Dプリンターによって安価に家が建つようになると、さまざまな価値観が変わるかもしれません。
流通やインフラも変化しつつある中ですので、都会に住むことにこだわらず、田舎の住みやすいところに住む人も増えるでしょう。
人口の偏りが都市一辺倒から変化して、土地の価値も変わるかもしれません。
また、3Dプリンターはコンクリートとドーム型の構造から、頑丈さをアピールしていますが、中に入れる鉄筋が少ないため、地震で崩れる恐れもあります。
新しいタイプの住宅ですので、どのような保障を用意すべきかは未知数です。従来の保険では賄いきれない問題も起きるかもしれません。
そうしたところから、保険の内容や仕組みも変化するかもしれません。
さらには、家そのものの値段が下がり、手軽に家が手に入るようになるため、家を借りる人が減り、家賃相場が下がる可能性もあります。
こうした新しい技術が、伝統的な社会の価値観を変え、不動産投資の価値すらも変えてしまうかもしれません。
現状ではREIT(Real Estate Investment Trust:不動産投資信託)くらいですが、もっと現物の不動産投資も、株式や為替のように、よりスピーディーで安価、手軽に取引されていくかもしれません。
そうした時代はすぐそこまで来ています。
まとめ 3Dプリンター住宅の発展で得られる未来
ここまでの話しをまとめると
1.3Dプリンター住宅で変わる住宅
安価で丈夫な家の出現は、間違いなく人のライフスタイルを変化させていくでしょう
2.3Dプリンターの進出で不動産投資も変化する
通勤に便利な駅の周辺に住む、というような、不動産に対する利便性一辺倒の価値観は大きく変わる可能性があります。
3.未来を踏まえた不動産投資方法についての考察
土地の価値観は大きく変わり、保険の仕組み、建築の制度や法律にも変化が起き、投資のスタイルも変化することでしょう。
となります。
新しい技術にワクワクとしつつも、価値観の変化を予想し、投資対象も再検討する必要性が出てきています。
もし、3Dプリンターのような家が普及すると、区分の一室に対する価値は減ってしまいます。
とはいえ、人が生きて行く以上、住む場所は必要です。それなりの土地、敷地の需要が下がることはありません。それだけに不動産投資が王道の投資方法であることに変わりはありません。
ですが、価値のある投資対象に変化が起きるという可能性はあるでしょう。いままで見向きもされなかった場所の利用価値が、急に上がるかもしれません。
土地は、利用用途を変更することで、ゴミにも宝にもなるものです。そして、3Dプリンターはまさに、現在の土地の価値に変化を与える可能性を十分に含んだ技術といえます。
今年から、一般住宅の広さに相当する100㎡の3Dプリンター住宅を販売すべく、法律や安全性の整備が行われています。
新たな時代の変化を感じつつ、今後のニュースに期待したいと思います。