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つい最近、貯金の重要性について話しましたが、もちろん僕のスタンスは投資の方が優先的です。
投資の種銭や、有事のときの蓄えなどをのぞけば、貯金よりは絶対投資すべきです。
金庫、貯金箱をはじめ、銀行預金も今回はあえて貯金に含ませていただきますが、こうした形での貯金は、近年の経済状況を鑑みれば、決して安全ではないと思います。
現実的な貯金箱や金庫による現金管理は、盗難や紛失、火災や地震などの天変地異などによるリスクにさらされています。
また、現実的な銀行預金の利用は、もはや安全に見せかけられているだけで、低リスクの投資などでは全く足りないほどに資産を減らしてしまいます。
そして、貯金は、持っているだけで自分の財産をリスクに晒しています。
尊い労働によって得られたせっかくの資金も、もはや貯金に回しているだけでは減る時代となりました。
教育や世間一般の常識に囚われすぎると、貯金を重視しすぎて、結果貧乏から抜け出せないということになりかねません。
今回は貯金のリスクについて考えてみたいと思います。
目次
貯金していればよかった高度成長期
日本人はとりわけ貯金が好きな国民です。
GDPがこれだけ下がってきた、というなかでも、せっせと貯金は怠りません。
一人当たりの稼ぎは30年前や50年前に比べるとだいぶ減ってしまっていますが、それでも恐ろしいまでに研ぎ澄まされた節約と貯金の能力で生活を支えているのがこの国民性です。
一部、使い込みで借金に苦しむ人々を除き、年収の多寡に関わらず、また今も昔も変わらず、高い意識で節約と貯金が続けられています
貯金が良い時代は、確かにあったのです。今は昔の話となりましたが、いまからおよそ40年から50年ほど前の日本の銀行は、金利が年7%ついていました。
年利7%だと、10年で金額が2倍になります。
100万円貯金したら、追加で貯金しなくても、10年後には200万円になった時代だということです。
もし毎月5万、年間60万を貯金し、年利7%で回し続ければ、複利の力でどんどんお金が増えていきます。単純計算で10年で880万、20年なら2600万円を越える計算です。恐ろしいまでの伸びです。
この当時、もし22歳の入社当初から5万円の貯金をし続けていたら、60歳になる頃には1億1千万を超える計算です。
この時代の人達ですので、老後は60歳から年金が開始され、しかもその額はいまよりも潤沢です。退職金なども合わせたら、2~3億は老後に残される計算になります。
老後二千万円はおろか、金融資産5億円以上と言われる「スーパーリッチ」となることも夢でありません。
しかもリスクは極小。投資など考える必要はありません。
まさにせっせと働いて、そのお金を少しずつ貯めていけば、引退する頃には退職金も含めて億を超える資産を作ることもできたわけです。確実に豊かな生活は、このテンプレートで手に入れることができた時代でした。
だから、お年寄りほど、貯金を推奨します。貯金して、手数料も少なく、高い金利がついたら、それこそノーリスクノーリターンです。
あとは自分の使う量だけを摂生していれば、資産を食い尽くすことはありません。
だから親からの教育も、学校の先生も、お金に関することといえば、節約と貯金。これが金科玉条のように叫ばれ続けてきたのです。
そしてこの教育は、時代の変遷を経ながら、バブルがはじけてリーマンショックや東日本大震災を経験しながら、綿々と受け継がれてきました。
貯金そのものの力が、時代の変化とともに小さくなっていることにもあまり気づかないまま、50年近くも前の日本経済に起きていた神話を、綿々と信じ込まされているわけです。
どう考えても、いまは貯金が安全という時代ではなくなりました。いままでは資産運用の仲間であるとも思われた銀行や保険が、僕らの財布からすこしでも多くのお金を抜き取ろうと、画策しています。
そこで、貯金は現代において本当に安全なのかどうかについて、考えてみたいと思います
1.現金管理なら管理が大変
まず、単純な貯金方法として、自宅にお金を置いておく、と言う方法です。現物を家において、常に見張っておく。もしくは金庫に入れてしまっておく。こうすることで着実に貯金していこうと言う方法です。
守銭奴と言う言葉があります。フランスの劇作家モリエールの喜劇作品の題名から来ています。
かなり貪欲でお金お金しか頭になくそれを貯金貯金といつも考えているような人のことを指してます。
もし家に大金を貯金していたら、いつか盗まれてしまうんじゃないかと、気が気ではないですよね。
高性能の金庫にしまうために結局お金を使ってしまったり、家の中のいろんな場所に分散して隠しては忘れてしまったり、と、落ち着くことがありません。
かといって、セキュリティの低い状態で貯金などすれば、現実的に誰かにすぐに盗まれてしまいます。
また、天変地異にも備えなければなりません。水害で金庫ごと流される。地震による火災で家ごと札束が燃えてしまう。などのリスクは、家で貯金していれば、つきものです。
それでこそ、銀行の出番があるわけですが、とにかく、大金を自分の家で管理する、というのは、現実的になかなか難しいことです。
数万円を小銭で貯金する、と言うならまだしも、100万円、1000万円と資産を大きくしたいなら、自宅での貯金は物理的にも、貯金者の精神的にも向いていないでしょう
2.ATM、振込み時の手数料
そこで、銀行の出番となります。口座を開けば、銀行が預金者の貯金を保証してくれます。
災害があって、自宅に戻れなくなっても、現代ならキャッシュカードさえあればATMや銀行の支店でお金を引き出すこともできて、便利です。
また、定期預金や外貨預金の形にして預ければ、利息がつき、幾分かお金を増やすこともできそうです。
お金をなくすリスクがなくなり、一件よいように見えます。高度経済成長期の会社員は、それこそこの方法で貯金し、驚異的な7%の利息を受け取っていました。
ですが、現代はその高金利は影も形もありません。普通預金なら0.001%、定期預金でも、よくて0.1%くらいの金利がいいところです。
外貨預金をすれば、米ドルなら2~3%は利息が付きますが、為替が変動してしまったら、その金利は一気に意味のないものになってしまいます。マイナスにさえなり得ます。
そして、さらに昨今の銀行の恐ろしいところは、手数料です。ありとあらゆる場面で、銀行は手数料をかけ、巧妙に僕らの貯金から小銭をかすめ取っていきます。
ATMでの時間外引き出しについては、無料の引き出し時間は、平日朝8:45~18:00あたり。休日が基本土日の会社員にはとても厳しい時間になっています。
どんなに気をつけていても、急な出費などがある度に、手数料を抜かれていきます
また、振込み手数料、定期の自動送金などは、年々手数料金額が上がっています。僕は手持ち物件の借地権の支払いを定額自動振込みで行っていますが、2万ちょっとの振込みにかかるその手数料は、なんと880円です。
ラーメン1杯くらいは食べにいける金額です。
こういったことを、いままではあまり気がつかないような金額でやっていましたので、僕らはあまり気にとめませんでした。ですが、すくなくともこのような現実を踏まえると、振込みで支払うと言う行為は、もうリスクです。
今時、多くの支払いが振込みで行われるななかで、200円~300円の手数料を取られます。一ヶ月に10回、振込みで支払いを行えば、3000円から5000円は手数料だけで支払うことになります。
預金の利息が1年で0.001%に対して、支払いの利息は毎月3000円以上となれば、これがリスクでなくてなんなのでしょうか。
ローリスク投資の代表格である個人国債の利息でも年利0.05%です。月3000円以上のマイナスを補うには、単純計算で国債でも1億円以上で回していなければ、増えません。
預金で増やす、ということなら、常に追加資金を多めに入れ続け、毎月手数料でいくらか出血しながら貯め続ける、という方法をとらねば増えません。銀行預金ではお金そのものが自己増殖しないのです。
増えないどころか、口座をつかって生活するだけで、いくらか余分に減るのです。
つまりマイナスです。これはノーリスクどころか、ミドルリスクノーリターンという、恐ろしい資産運用です。
3.物価が上がる(ハイパーインフレが来たら無価値)
また、もっと恐ろしい事態も控えています。これは手数料とはちがい、目に見えないので認識しづらいのも、やっかいなところです。
手数料の時点で、あまり損を感じていないのなら、インフレでは確実に大損をしてしまいます。
インフレとは、急激な物価高のことです。その逆が物価が上がらないデフレです。日本は長いことデフレと言われていますが、デフレが長いだけに、急な揺り戻しで大きなインフレ、つまりハイパーインフレが来る危険をはらんでいます。
インフレのリスクは、常に日本ははらんでいます。世界でハイパーインフレを過去経験したことがある国は、 いくつかありますが、驚くなかれ、日本も戦後直後に経験しています。
このときは物価が約70倍に跳ね上がりました。現在ラーメン一杯800円くらいだとすると、一杯が5万6千円もの金額になってしまいます。
もし現金だけで生活していたら、確実に破産します。物価高に合わせて価格が上昇するものを持っていなければ、現金は無価値になってしまうのです。
不動産や株、投資信託などは物価高にあわせて価格も上がっていきますが、現金は何も変わりません。これが貯金だけをしている場合のおそろしい未来です。
しかも、戦後のハイパーインフレは、軍部が戦費を産み出すためにお金を刷りまくったことの反動でおこりました。
今現在も、黒田総裁率いる日銀は、追加緩和の連続(昨日もそのような報道でしたが・・・)のなか、日本銀行券(お札です)を刷りまくっています。
まだ、日銀はすったお金を国債購入に充てているため、市場にお金があふれていませんが、先日の10万円のように、なんどもお金を配りまくるようなことが増えてくると、市場にお金があふれてくるので、危険信号です。
そんなこと、起こるわけもないだろう、と言う意見もあると思います。ですが、理論上、起こりうる可能性はゼロではないのです。ゼロではないどころか、起こりうる可能性は、着々と上がっているのです。
そんなわけで、少なくとも貯金していることは、少なくとも「ノーリスク」ではないことが言えるかと思います。
まとめ やっぱり投資をするしかない
ここまでの話をまとめてみます。
1.現金管理なら管理が大変
現実的にも、精神的にも、家に貯金下お金をしまっておく、というのは、現代社会では特に不可能でしょう
2.ATM、振込み時の手数料
気づかれない程度に少額をかすめ取っていた銀行ですが、ここに来てあからさまに高い金額を取ったり、ありとあらゆる場面ですべてに手数料をかけるようになってきました。
3.物価が上がる(ハイパーインフレが来たら無価値)
現金で持っている。というのも、一つの資産運用の形です。貯金とは、現金という投資を一点買いしている状態なのです。現金の弱点であるハイパーインフレが起こったら、ひとたまりもありません。日本では、そのハイパーインフレの可能性が着々と高まっています
と言ったわけで、結論はいつも書いているとおりですが、やっぱり投資を始めるしかない、と思います。
べつに、儲かるから、とか、ちょっと小遣いが増えるから、というような理由だけではないと思っています。貯金で増やすには、もはや日本では危機的状況なのだと思うのです。
たしかに投資にはリスクはつきものですが、このように考えると、特に現代日本においては貯金もリスクありなのです。
むしろ貯金一点買いは、増えにくい上に、手持ち資金を大きく減らしたり、無価値にするリスクを背負っています。
こうした不安定な時代だからこそ、あり得なかった金利時代に作られた、高度経済成長期の貯金神話を疑った方がよいと思うのが僕の考えです。
貯金にこだわらず、勇気を持ってしっかりとリスクをとれば、むしろその方が明るく、楽な未来も描けるのではないかと思います。少なくとも僕はその信念のもと、投資を続けています。
正しい資金管理の考えのもと、投資をしていくことで、豊かな未来を手に入れたいものです。