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2020年4月1日に民法が改正となりました。
●PDF 保証のルール変更のポイントを示した法務省パンフレット
あまり気がつかないこともありますが、不動産投資を行っている方、とくに自主管理で行っている方については、保証人との関係にいくつかいままでとの違いが出ているので、注意が必要です。
今回は、そのなかでも早めに対応すべき、保証金の極度額表示の義務についてご説明したいと思います。
対応していない契約書は無効となってしまうようなので、ご注意ください。
目次
保証人の不安が大きかった連帯保証制度
不動産投資をやっている方であれば、だれでも分かることだと思いますが、入居に当たって連帯保証人をつける、というのはよくあることだと思います
入居者の親や兄弟、会社の上司などになってもらうほか、保証会社と契約を結ぶ、といったことも最近はよくあります。
保証会社はともかくとして、これまで入居者の親御さんなどは、入居者が家賃滞納などをしてしまうと、大金を要求される可能性がありました。
大体は、家賃収入に敏感な大家さんが多いので、滞納した時点で問い合わせが来ることになると思いますが、数年間問い合わせがなかったりして、滞納金が積み上がってしまってから請求、というケースもあります
また、他にも物件に損害が与えられた場合、異常な損失額を要求される、というケースもありました。
連帯保証人ですと、そういった請求が急に来ても、逃れることはできません。入居者の責任はすべて連帯保証人にかかってきますので、入居者の連帯保証人になっている親御さんが、急に多額の債務を払わなければならない、という事例も数多くありました。
連帯保証の制度は日本独特の制度です。もともとは家賃滞納が多かった時代に大家さんを守る制度として存在していましたが、最近はただ危険な契約、というイメージだけが一人歩きしています。
借金の連帯保証人にだけはなるな。という教育を受けた方も多いと思います。賃貸においても、この「連帯保証人」に危険信号のイメージを持つ方も多いかも知れません。
その危険もあってか、最近は保証人制度なしや、保証会社を間に入れて契約する賃貸契約も増えています。
ですが、保証人にとっては不安の多いこの制度も、大家にとっては逆に、保証人なしで賃貸するのは不安というものでしょう。
大家にとっては保証なしで契約をするのは、家賃滞納の他、家屋の損壊などの被害があったときに、全責任を受けなければならないというのは、大変なリスクです
1.保証金の極度額の提示について
これまでの保証人契約の観点では、「いったいどこまでが保証の範囲なのか」が明確化されないことが大きな問題でした。
保証人にとっては、なにで大家に損害賠償を請求されるか分かりませんし、もし請求された場合には、何をいくら支払わなければならないのか、まったく分からないわけです。
目隠しをされたまま、これから先の保証を約束させられているのですから、不安も大きくなります。
そこで、今回の民法改正では、その極度額を契約時に約束しておく、ということになりました。
いきなり法外な保証金を請求されることがないよう、一定の相場の中で補償額を求めるよう、取り決めが変更となったのです。
これによって、もし入居者側に問題があっても、保証人の補償額は限定的となりました。
例えば、入居者の火の不始末が原因でアパートが全焼した場合でも、保証人はアパート全ての補償ではなく、きめられた額の範囲内で支払いをすれば済みます。
ですので、大家さんとしては、入居者のミスによる火災や損壊に備え、保険も見直しておいた方が良いでしょう。
2.極度額の相場は家賃2年分程度
では、極度額の相場はどうなっているのでしょうか。
かならずこれ、というモノはありませんが、裁判になった場合でも法外と言われない範囲としては、家賃2年分と言われています。
あまりないこととは思いますが、たとえば
- 入居者が行方不明になってしまった。
- 探したけれどなかなかみつからない。
- 長い間家賃が滞納されてきたので、部屋の荷物を片付けた
こんな事例があったとすると、この一連の動作について、長くても2年くらいで決着がつくでしょう。という落としどころです。
一室の家賃が5万円のアパートなら、120万円くらいが保証金の限度額として設定できる最大範囲、ということになります。(契約書には金額で記載した方が良いようです)
いきなり数千万円とはならないので、これであれば保証人としても安心でしょう。入居者としてもたとえば親などに保証人を頼んでも、これであれば納得してもらえるのではないでしょうか
入居者、保証人、大家すべてがある程度納得できる落としどころ。それが今回の極度額の設定と相場、ということになるかと思います。
※ただし、賃貸物件は借り物です。社会人として家賃は入居者が責任を持って払いましょう。
3.自主管理なら契約は巻き直した方がが無難
ちなみに、4月1日以降は、この保証額が書き入れられていない契約書は無効となります。
これまでの契約には大抵保証額の限度額は書いていないと思います。
自主管理の大家さんは特に入居者と再度契約書を巻き直した方がいいと思います。
テナントなどの場合も基本的に条件は同じですので、保証人をとっている大家さんは契約の巻き直しをオススメします
僕も、今回入居者さんたちに再度説明して、故郷の親御さんなどに書類を送らせてもらい、やりとりしました。
契約書の巻き直しは、面倒くさい印象を与えるので、どうかなーと思っていましたが、逆に若い入居者に保証人の親御さんの反応を伺うと「ちゃんとした大家さんだね」ということで、概ねいい印象でした。
極度額の設定は、大家の取り分が少なくなってしまううえ、こちらから契約を巻き直すよう促さなければならないので、ちょっときつい印象もあります。
ですが、入居者やその保証人の反応は概ね良好で、きちんとして大家さんのところに子供が入居している、というイメージを与えることもできました。
入居者と保証人(親が保証人である場合は特に)との信頼関係を上げて、より長く住んでもらうためにも、ここでコミュニケーションを取っておくことは無駄ではなかったかなと思っています。
まとめ 自主管理のスキルが上がるときです
ここまでの内容をまとめてみます。
1.保証金の極度額の定時について
2.極度額の相場は家賃2年分程度
3.自主管理なら契約は巻き直した方がが無難
こういった法改正にともなう契約の対応などが自主管理ではたまに起きるため、面倒イメージがあります。やっぱり管理会社に任せた方がよいかも、と思うかも知れませんね。
日本の80%の大家さんがそれで管理会社に管理を任せています。物件内の部品修理、交換などと併せて、この辺の法的対応のめんどくささは、自主管理が敬遠されやすいところです。
逆に言えば、この対応ができる大家さんは、自主管理がどんどんスキルアップしていきますし、管理会社に任せている大家さんよりも大きな差別化に繋がります。
管理会社に任せなくても良くなれば、利益は総取りとなります。また、管理会社に任せている場合、現場からなにか言われても、いいなりにならずに大家として自分で判断できる、という利点もあります。
法的な対応については、ググればたくさん情報も出てきますし、動画もあふれていますので、管理会社に任せる必要性は減っていると思います。
こういった契約に関する部分から管理のことに絡んでみてはいかがでしょうか。
入居者との良好な関係は、長期にわたり楽に家賃収入を得られる結果にも繋がります。
ぜひこういったところから、大家さんも取り分を増やしていって欲しいと思います。