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あなたは、黄金比について知っていますか?
古くから研究されている比率で、人間が美しい、心地よいと思いやすいと言われる比率です。
数値そのものは1:1.618、または0.618:1という比率に代表されます。完全にこれ一つというわけではありませんが、この1:1.618というのが一般的に有名です。
この黄金比は、なんとなく人間が落ち着くサイズと言われています。
実際、テレビ画面のタテヨコのサイズ、クレジットカード、名刺、タバコの箱などのタテヨコのサイズなど、数々の汎用されている長方形は、この1:1.618をもとにしたサイズで作られています。
今回は、この黄金比と深い関係のあるフィボナッチ数列について説明し、投資への利用、とくにチャートの読み方への応用についてご紹介します。
一見無機質で、捉えどころがない株価や為替のチャートを、この黄金比を利用して攻略するという試みです。
ちょっとオカルトチックな話ですが、楽しんで読んでいただきながら、その意外な合理性に触れていただけたら幸いです。
目次
フィボナッチ数列と黄金比について
黄金比については、古代から研究が進められてきました。
その中でもとくに有名なのが、フィボナッチ数列に基づく計算方法です。
フィボナッチ数列は、13世紀ごろ、中世随一の天才といわれたイタリアの数学者、レオナルド・フィボナッチによって作られました。
この数列によって打ち出される数字は、不思議なことに非常によく使われる黄金比との深い関連性があります。
まずはフィボナッチ数列の数字を並べていきます。
0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233、、
こんな感じの数列です。一見どんな規則性があるのか?と思ってしまいますね。
この数列の法則性を説明しますと、3項目にあたる1以降の数字は、全て直前二つの数字の和になっているということです。
0+1=1
1+1=2
1+2=3
2+3=5
3+5=8
といったように、直前二つの数字を足していった数が並んでいます。
この数字の増え方はウサギの子どもが増えていく様子からフィボナッチが考え出したそうです。
木の枝が分かれていく増え方、多くの花の花びらの枚数の増え方も、この数列と同じ増え方をするそうです。
最近では人間の気管支の枝分かれ、肝臓の血管の増え方も、この増え方になっていることもわかっています。
詳しい説明は省きますが、ヒトのDNAの二重らせん構造、銀河の渦巻きなども、この数列との相関がみられています。
どうやらこの数列は、人体や自然の摂理とも深い相関がありそうだ、ということがわかります。
また、フィボナッチ数列の隣り合う数字を割っていくと、限りなく1:0.618に近づくことも知られていて、数が大きいところを割ると、ほぼ1:0.618になります。
1÷1=1
1÷2=0.5
2÷3=0.666…
3÷5=0.6
5÷8=0.625
8÷13=0.615384…
13÷21=0.619047…
21÷34=0.617647…
34÷55=0.618181…
55÷89=0.617977…
89÷144=0.618055…
144÷233=0.618025…
233÷377=0.618037…
非常に不思議な数列です。しかしこの数列が黄金比と深い相関があるのなら、この数列によって打ち出される数字は人間にとって美しさ、心地よさを感じる数字になるはずです。
この仮説によって生み出されたテクニカル分析手法、それがフィボナッチリトレースメントです。
前置きが長くなりましたが、ここからはフィボナッチリトレースメントについて説明していきます。
1.フィボナッチリトレースメント
チャート分析においては、フィボナッチリトレースメントという手法がよく用いられています。
これは、チャートの波は黄金比といわれる比率のところで折り返すのではないか?という仮説のもとに考えだされた手法です。
チャートとはFXや株式投資における値動きを表すグラフのことですが、一見すると価格の動きを図に表しているだけですので、黄金比との関係があるとは思えません。
とはいえ、チャートというのは、1方向にむかって突き進んでいる時でも、多少逆方向への動きを交えながら動きます。
ジグザグに、上げと下げをつけながら、全体でみると1方向に動いているのです。
例えば、上昇トレンドを迎えている時でも、多少価格が下がることがあります。その時点で利益確定の売りが入ったり、自動売買の売り注文が同じところに溜まっていたりするからです。
ただし、その下げは一時的で、トレンドの中にいるかぎり、また価格は上昇していきます。
この上昇トレンドのなかの一時的な下げ、トレンドに影響しない程度の価格低下のことを押し目といいます。
押し目買いという言葉をもあり、わざとこの押し目で下がった一瞬に買いを入れる人もいます。
実際トレードしていくなかで、もし押し目とトレンド転換の見分けがつくのだとしたら、絶好の買いポイントを見つけることができます。
また、押し目だけではなく、トレンドが完全に反転していることを推し量ることもできるのです。
この押し目の押し加減を見極める手法が、フィボナッチリトレースメントなのです。
2.黄金比から打ち出された23.8、38.2、50、61.8と言う数字
では、この押し目はどのくらいで反転するのでしょうか?また、トレンドと逆の動きが始まったとき、その動きはどのくらいで止まり、またトレンド方向に戻るのでしょうか?
当然ながら、それは誰にもわかりません。チャートの動きは、たくさんの人々のさまざまな投資判断が絡んでいるため、常にランダムなのです。
現代科学では、完全に見分けることはできません。
フィボナッチリトレースメントは、この押し目の動きを黄金比を利用して読み切ろうとする試みです。
チャートとトレンドにも、流れが変わる頃合いというものがあります。
トレードをしたことがある人なら誰しも、チャートを見つめながら、そろそろこの辺で折り返すんじゃないか?と思うポイントがあると思います。
この押し目の下がり具合を、黄金比を使って数字で見てみよう、というわけです。
黄金比は1:1.618、もしくは0.618:1ですので、為替で言えば1円上がった後は、いったん0.618円下がると考えるわけです。
もちろん、チャートのジグザグが全てこの比率で上下をくりかえすわけではありませんので、もう少し数字が加わります。
フィボナッチ数列は、直前の数字との比率は0.618:1に近づくわけですが、2つ前との比率は0.382:1さらに3つ前の数字との比率は0.236:1に近くなります。
1例をあげるとそれぞれ
144÷377=0.381962…
89÷377= 0.236074…
のようなことです。つまり一定のチャートの動きを100%とした時、黄金比から考えると押し目の戻り幅は61.8%、38.1%、23.6%あたりが妥当なところになる。というのがこの手法の基本的な考え方です。
したがって、もしチャートが1方向に勢いよく動いたあと反転を見せ始めたら、23.6%、38.1%、61.8%のいずれかの下げ幅のところで押し目となり、もとのトレンドに戻るということです。
実際には半値戻しの50%もいれ、23.6、38.1、50、61.8これら4つの数字が押し目の反転ポイントということになります。
フィボナッチをチャート分析に入れるなら、覚えておいて損はない数字です。
3.実際の活かし方
さて、実際のチャートでの使い方はどうなるのでしょうか。ごく基本的な使い方をご紹介します。
とはいえ、多くのプロトレーダーも、基本の使い方で十分と言っているので、それで大丈夫だと思います。
一例として、今現在これを書いている2022年10月時点のチャートを見てみます。表はポンド円の4時間足のチャート推移です。SBI証券の取引画面を使っています。
10月半ばは160.000を底値に一定の上昇を続けてきましたが、170.000円を頂点に下落を開始しています。
ここからどのくらい下落したら、本格的な下げトレンドへの展開とみるべきでしょうか?
フィボナッチ数列による黄金比で考えてみます。160円から170円に10円上がっているのでこれを100%とすると、それぞれ
23.6%は2.36円、
38.2%は3.82円、
50%は5円、
61.8%は6.18円
くらい下げることになります。
SBI証券のFX画面では、フィボナッチリトレースメントを書くボタンが標準搭載されていますので、使ってみることにしましょう。だいたい通常の証券会社のFX画面には搭載されています。
数日後のチャートにフィボナッチリトレースメントの線をひいてみます
鉛筆のマークをクリックしたあと、フィボナッチリトレースメントのボタンを押したら、170円の頂点部分をクリックし、そのあと160円の底値部分のローソク足先端をクリックします。
すると、このような線が出てきました。横には23.6、38.2、50.0、61.8と書かれています。
ポンド円は170円をつけた後、23.6%のラインを底値に横ばいのレンジ相場を繰り返していますね。
その後、日本政府のドル円為替介入の影響によって、強制的に円高に触れていますが、それでも最大で50%のラインに触れたあと、すぐに38.2%のラインに戻り、さらに23.6のレンジ相場まで戻しています。
もう一度為替介入の影響があり、強制的に下げられているものの効果はなく、すぐに23.6%を底値とするレンジ相場に戻ってしまいました。
最大の振り幅である61.8%には、まだ触れることすらありません。この手法で行くと、トレンドの転換は起きていないと判断することになります。
結果的に、為替介入によるノイズを外すと、ほとんどのローソク足が23.6%を底値にレンジ相場で動いていることがわかります。
多くの市場関係者、投資家たちがこの辺で折り返すかなあ、と思っているラインと、黄金比がちょうど噛み合っていて、今回の値動きについては23.6%のラインが押し目になりそうです。
すこしレンジ相場が長くなっているので、必ずそうなるかはわかりませんが、この23.6%を押し目に、ポンド円が170円を突破して踏み上げていく可能性が見えてきます。
未来のことは分かりませんが、こうした分析を踏まえて、
●23.6%ラインを割り込み始めたら、下落トレンドに変換かな?
●170円を突破したら、また上昇トレンドに乗りそうだな
●もしかすると、しばらく横ばいかも?
などと今後の展開を予想し、対応策を考えていくこともできそうです。
こうした検討を、FXトレーダーはよくシナリオを書くなどと表現します。当たるも八卦、当たらぬもの八卦のチャート予想ですが、まさに先の展開のシナリオを書くためにはよいツールといえそうです。
まとめ 美しさを投資理論に活用するという人間臭さ
ここまでの話をまとめると
1.フィボナッチリトレースメント
黄金比をチャートを読む分析方法に活かす手法のことです。
2.黄金比から打ち出された23.8、38.2、50、61.8と言う数字
フィボナッチ数列から、この数字が主な押し目の下げ幅、上げ幅になると予想します
3.実際の活かし方
標準装備のトレースシステムを使い、チャートに線を引くことで、トレンドの転換や押し目の状況を目で見ることができます
となります
フィボナッチリトレースメントを活かしたテクニカル分析は、黄金比を利用した分析手法です。
チャートがどこで反転したら心地よいか、どんなジグザグを描いたら美しいと人間は思うのか、、というある種の思い込みのような理論を土台に組み立てられています。
何を美しいと思うか、何を心地よいと思うかなどは、もちろん人それぞれであってしかるべきです。
その、バラバラなはずの人間の感性を1:0.618というワンパターンの数字に集約し、黄金比と名付ける。さらにはその比率でチャートの押し目が決まりやすいと考える、、これはある意味暴論です。
ですが、投資も絶対はありません。この線に触れたら、必ず100%チャートが折り返すなどという指標はないのです。
だとしたら、美しさ、心地よさという要素こそが、大衆心理を限りなく織り込んでいて、チャート動向のカギを握っているという理論は、ある意味合理的です。
一見人それぞれでバラバラな価値観にみえる美しさ、心地よさという感覚こそが、グラフと数値ばかりのチャート分析に最も役立つ。
それはなんとも人間臭い、しかし合理的な理論だと思います。
しかもこれがかなり役に立つという不思議な事実が、テクニカル分析の中でも強烈な存在感をはなっています。
人間の「そろそろこれくらいで折り返すかな」「この辺で折り返すと心地いいよな」という感覚を集約したものが黄金比です。
その黄金比が、無機質にみえるチャートの転換点とリンクし、チャートの押し目を教えているとしたら、なんとも不思議な事実です。
当然ながら、この分析も100%ではありません。しかし高確率で当たることも事実です。
絶対じゃないけれど、だいたいそうなる、というあたりがなんとも人間臭いと思います。
為替レートは最近円安方向に触れ続けていますが、この動きがどこまでいくのか?どんな押し目をつけるのか?それは誰にもわかりません。
その曖昧な動きを読み解くひとつのものさしとして、このようなロマンあふれる分析方法を用いてみるのも面白いかもしれません。