この記事はおよそ 15分19秒で読めます。
土地つき一戸建てを、安く手に入れたいとお考えですか?
土地つき一戸建ての中古不動産を得る方法の一つに、借地権での購入というものがあります。
土地には借地権と所有権がありますが、借地権であれば、所有権とは比べ物にならないくらい安い金額で土地を手に入れることができます。
ですが、よほど不動産に慣れている人でない限り、借地権を使って投資をするのはおすすめできません。
今回は、僕が借地権投資で失敗した事例を振り返りながら、もう少しどのポイントに気をつけるべきだったのか?より正しい攻略方法はなんだったのかについて、すこし触れていきたいと思います。
目次
借地権投資の失敗例。適切な攻略方法についての考察3つ
そもそも借地権には、旧法借地権と新法借地権のふた通りの権利があります。
借地権そのものについて深く掘り下げると、法律と歴史から説明しなくてはならないので大分長くなってしまいます。
それについてはまた別の機会でお話しするとして、ごく簡単に説明すると、旧法借地権での土地購入は、事実上所有権に限りなく近いと言われています。
旧法借地権では、借地の上にいわゆる上物(うわもの)といわれる建物が乗っかっていれば、その建物を利用している限り底地権者(借地を貸している地主のこと)から追い出されることはありません。
例えば、借地の上に物件があって、そこに住んでいる人がいる限り、借地権者が追い出されることはありません。
となれば、契約次第ですが、借地権購入者が賃貸し続けている限り、借地権者の権利も、その店子である入居者も、地主から立ち退きを命じられることはないのです。
この法律上の仕組みを巧みに使って、不動産業者は、これこそが新しい不動産投資のスキームだ!などと言って初心者の不動産投資家に物件を勧めたりします。
つまり、土地値が高い都市部でも、安く購入して、高く賃貸できるという売り文句です。
ですが、この売り文句をそのまま鵜呑みにすると、僕と同じ失敗をしてしまうことになります。僕の場合は、結局泣く泣く手放すしかない事態になってしまいました。
では、どうすればよかったのでしょうか?これについて、宅建士や銀行、馴染みの不動産投資家の方からいただいたアドバイスをもとに、注意点や備えるべきポイントをまとめました。
ぜひご参考にしていただき、あなたの不動産投資にうまく活かしていただければ幸いです
1.旧法借地権だけでは安心できない
冒頭あげたとおり、旧法借地権だけでは安心できません。押さえておくべきは、借地権を買い取るときの契約書の内容をきちんと吟味することです。
たしかに、旧法借地権はそこに物件としての建物がある限り、借り手に有利な権利です。しかし、およそ今どき借地権を売る側は、たいてい昔の大地主、つまりお金持ちです。
こうした人々はたいてい本人が取引することなく、損をしないようにお抱えの宅建士が間に入って取引します。
よく、街のいたるところにちいさな店舗を構える不動産屋さんなどを見かけることがあると思いますが、だいたいこういった老舗の地元不動産屋がこういう案件を取り扱っています。
かれらは、旧法借地権を普通に扱っては、依頼主の地主が損する取引になることは最初からわかっていますので、そうならないよう契約書にいろいろと特約をつけるのです。
ちなみに、契約書における特約は、普通に記入されている条項よりも意味合いが強いものです。わざわざその取引のために条件を追加しているので、より強い約束事として認識されます。
この特例に、旧法借地権の弱点を補う内容が記載されていれば、まずもって契約しない方がよいでしょう。
例えば、建て替えや使用用途の変更、売却を行う際は、地主の了解を得る。などです。このときに承諾料の設定もされます。
住む分には構わないけど、リフォームや賃貸に出す、売却するなどの時には、必ず地主の了解がなければ身動きができない仕組みにつくられます。
また、土地の賃借人としての使用料も少なからず取られます。一見当たり前に見えますが、これも周辺相場を知らなければ、少々高めに設定されても分かりません。
また、契約期間も、旧法借地権ならば本来50年は更新がありませんが、この特約に記載することで、期間を縮めることもできます。その際、当然更新料は求められます。
こういった契約書の内容については、宅建業法で購入者が不利にならないように守られており、一般的にはその意味合いについて詳しく説明されます。
ところが、宅建士もたいてい売る側の人間ですので、購入者が不利になることは、本当は説明したくないというのが本音のところです。
したがって、この特約については一通り読み上げなどはしますが、その意味するところについてまでは説明はしないでしょう。
購入者がよほど慎重か、よく分かっている人でない限り、こうした条件がついてしまうと、住むのをやめて転出することすら難しくなってしまうのです。
所有権には、こうしたしがらみは当然ありませんので、最初に土地つきの不動産を買うなら、借地権はやめておいた方が得策といえます。
それでも、借地権には購入代金が安いという魅力があります。そちらのメリットをとって、借地権で購入するなら、経験が十分あって信頼できる宅建士をつけて、一緒に契約書の内容をみてもらうのがよいでしょう。
とくに、融資をつけるなら、銀行にもみてもらい、ダブルチェックをしてから購入に踏み切るなど、慎重な仕組みをご自身の購入の段取りに加えておくことをお勧めします。
2.借地料の相場に注意
先程少し触れましたが、借地料の相場にも注意しておくべきです。とくに、不動産投資として借地権の土地に上物を建て、賃貸に出すとすれば、これは必ずチェックしておいた方がよいでしょう。
知らなければ、やはり貸す側が有利です。この辺の地盤ではこのくらいの金額が一般的ですよ、という文言と共に、やや高めの金額に設定される恐れもあります。
借地料は毎月支払うもので、且つ借地している間はずっと支払い続けるものです。
一般的な地主であれば、およそ年間の土地の固定資産税をカバーしていれば、もうマイナスはありませんから、それ以上を求めることはありません。
しかし設定される借地料は、借り手が相場を知らなければ、たいてい割高となるのです。
借り手は建物の固定資産税と、この借地料を払い続けるのですから、最終的には所有権で土地の固定資産税を払うよりも高くついてしまうことが多いです。
ですので、所有権とした場合の固定資産税は、購入者は知っておいた方が良いでしょう。
また、なかなか手に入りにくい情報ですが、周辺におなじ地主さんの借地があれば、そこの借地料が1㎡あたりどのくらいなのかも知ることができればよりよいと思います。
取引する時に、こんな情報が手元にあるのとないのでは、大分違います。購入者自らが、きちんと損得の根拠を持って契約内容を吟味することができるでしょう。
3.借地の地主との関係を適切に構築する
ここまで、借地権の落とし穴、知識上の難しいところを説明してきました。
借地権には、もう一つ抑えておかなければならない重要ポイントがあります。
それが、地主さんとの関係です。できれば協調したいい関係を結んでおくことが大変重要となります。
借地権はあくまで権利、そして借り手は権利の行使者ですので、特段地主と蜜月の関係を結ぶ必要はありません。
ですが、その意味合いは、全く付き合わなくてよい、ということでもないと思います。ここは賛否両論かもしれませんが、僕はそう思います。
借地権における地主と借り手は、まさに賃貸物件でいうところの大家と賃借人とほぼ同じです。
日本の場合は、トラブルを避けるためにこの両人はまったく知らない人として、会うことはあまりないと思います。
おそらく、賃貸物件に住んでいる人も、管理会社の人は知っていても、大家さんのことを知っているという人は、かなり少ないのではないでしょうか。
もちろん、直接会うことを勧めているわけではありません。狙うべき関係は、困った時はお互い様、と助け合う関係性を作っておくことです。
借地の借り手は、借りた土地をどう利用しているか、暮らし向きは順調か、借地で今後何が起こりそうか、といったことを、仲介業者を通じてしらせておくことです。
これによって、地主にも、突然ではなく、その土地がどのように利用されていくのかをしらせることができます。
住むのをやめて、賃貸に出そうとしている。転売しようとしている。使用用途を変更しようとしている。など、地主のお抱えの仲介業者を通じて知らせておくだけでも、間接的にコミュニケーションが取れます。
すると、地主さんの承諾を得られやすくなり、借地での活動がしやすくなるのです。また逆に、長く住んでいれば、借地の買取りを依頼されることもあります。
一定のコミュニケーションが有れば、そのときに気軽に情報が入ってくる上、買取り金額も譲歩された金額に調整されることになるのです。
何も言わなくても、かなり値ごろな買取り金額が提示されることすらあります。
こうした「お互いさま」の関係がないと、土地に何か変更を加えようとするとき、頼む側がかなり不利になってしまいます。ときには気まずさが残るようなことも。
そして、だいたい土地になんらかの変更を加えたがるのは、住んでいる当事者の借り手であることの方が圧倒的に多いのです。
こうなると、承諾料や借地料の精算時にも、不利な取引となってしまいます。
まとめ 借地権物件を扱う際には、自分が慎重になるための工夫をしよう
ここまでのお話をまとめてみますと
1.旧法借地権だけでは安心できない
旧法借地権自体は借りる側を守る法律ですが、それだけに契約に特例がついてくるケースが多いことに注意です。特例を認めてしまう契約をすれば、事実上借家人が守られないケースもあり得ます。
2.借地料の相場に注意
借地を貸してくる側が、たいてい百戦錬磨であることを理解しましょう。それなりの相場勘がないと、借地料や承諾料が高くつく場合があります
3.借地の地主との関係を適切に構築する
大家とかりる人の関係でも分かるように借地の地主さんとはせめて「お互い様」の関係を結ぶようにしましょう。適切なコミュニケーションによって、適正価格での交渉ができるようになります。
いかがでしょうか。どれもよく考えたら当たり前のことに見えるかもしれませんね。
とくに数百万、数千万を使う不動産投資で、そんな甘い見通しで取引するわけないだろ、と思う方もいるかもしれません。
しかし、いざ動かせる大金が手元にある場合、それが現金でも借金でも、浮き足立つのもまた人情です。
僕の時は、はずかしながら正直ここに述べた注意点についても調べていなかったので、あとでだいぶ困ることになりました。
それだけに、自分が慎重になれる仕組みを普段から作っておくことが大切です。
調べておくべき情報を箇条書きで整理しておく。購入時のマイルールを設定しておく。誰と必ず相談するかを決めておく。などは借地権のみならずとも意識しておいた方がよいでしょう。
ぶっつけ本番で行う不動産取引は、十分な道具もなく洞窟を探検するようなものです。
逆に手元に適切な情報が揃っているというのは、暗い道を照らすライトがあり、坂道を下るときにアイゼンやピッケルがあるようなもので、手堅く先に進むことができます。
また、不動産取引はチーム戦でもあります。こうした情報が十分に取れていなくても、味方になってくれる宅建士や建築士、大工、仲間の投資家などが数名いるだけで、危うい決定を止めてくれることもあります。
こうした人々とのコミュニケーションを適切にとり、必要な情報を揃えてから、契約するかを決めましょう。
情報や仲間が十分じゃないのに、独断で全部を決める。これだけはやめておいた方がよいでしょう。いくらお金があっても、必ず損してしまいますし、なにより後悔もすることでしょう。
売る側は、「周りの意見は、英断を鈍らせますから、大切な決定はご自身の感覚を大切にした方がよいですよ。そうして優柔不断になると、結局いつまで経っても物件を買えませんよ。」
など、思想的な言葉も使って、焦らせながら購入を勧めてきます。
投資家、起業家はたしかに決定しなければならない仕事ですが、それは情報が集まった上での話です。
今述べたような事実に関する情報すら手に入っていないのであれば、まだ決定を下す段階ですらありません。
売る側になんと言われようとも、マズイ物件、疑問が残る物件は買わない方が良いに決まっています。物件が買えないことは、恥ずかしくも勇気がないわけでもありません。
ここでさっさと購入を決断しないとみっともないかな、などと思わずに、臆病に取引するのもアリだと思います。
借地権物件は、近年とくにオトクな掘り出し物として扱われることが多く、一攫千金の種のように言われます。
ですが、これまであまり扱われてこなかったのは、それなりのわけもあるのです。
個人的には、数十回と繰り返した豊富な取引経験、10年来の信頼できる不動産仲間、積み上げた知識があれば、借地権の物件を大化けする土地に変えることは可能だと思います。
そのために、日々不動産の情報に触れておくことは損ではないと思います。
臆病なほど慎重になりつつ、じっくりと必要な条件を抑えて大きな果実を作る。
だいぶ遠い道に見え、面倒くさいようでもあります。ですがある意味、面倒な借地権できっちり儲けられるようになってこそ、不動産投資家として一人前と言えるのかもしれません。